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どんな木でも水が無ければ枯れてしまうし、どんなに高い木でも葉先まで水分は行く。 でも水を飲む音が聞こえる木があることはあまり知られていない、会ったとしても何時でも聞けるわけじゃなく 出会いの時があるのだと思う、僕が最初に聞いたのは5年程前のことだった それは春三月のよく晴れた日、日当たりの良い南向きの斜面に生きる大木だと言う。 僕の畑の周りにはなぜかオキナワウラジロガシの群生があり、そのほとんどが大木で板根をどかっと張り、電話ボックスにも使えそうな程空洞化した古木まである。 他の木ではここまで大木になったものは見当たらない、ウラジロガシだけがなぜここまで成長できたのか不思議だ。オキナワウラジロガシは芽吹きが早いため2月の山なみにはそこだけ若葉色が点在していて、新緑真っ盛りの今はもう深緑色に染まっている。よく知られているのは日本最大のどんぐりが実ることだろうか 初めのころは何度もその古木たちに聞き耳を立て探し回ったがついに一度も聞くことは無く、他種の木も探したがことごとく外れ、諦めかけた時最後に巡り会ったのは意外にも畑のすぐ下にある樫の木だった。 南向きの斜面、ポカポカのお日様をあびながら黄金色に揺れる葉に これだ と直感、ワクワクしながら抱きついたが、、。何事も無く 体の中を寒風が通りすぎていった。 木がしゃべるくらいなら農業でこんな苦労はしないさね、ガセネタに踊らされ僕はなんと大人気ない事をしてるんだろう。夢から覚めるようにその場を離れた お昼の時報を聞いて作業の手を止めた。もう一度だけあの木を確かめてみよう だめもとだ。木肌に耳を押し付ける かすかに何か聞こえてる、もうドキドキだ 体ごと寄りかかり目を閉じて聞き入った 木肌から伝わる音がだんだん大きくなってくる ザー ザー これは風の音だ、木の葉を撫ぜる風の音だ そのうちチョロッ チョロっと小さな小さな一粒の小川のせせらぎのような音が聞こえてきた、たしかにこの木は水を飲んでる こんなにはっきり聞こえてくるとは驚きだ なんと優しいせせらぎ なんと不思議な木 こんなに木が安らぐなんて初めてだな、僕はこの森に溶けこんで樫の木の一部になり時の流れさえ忘れてた なぜか翌日には、もう普通のウラジロガシに戻ってた 次の年もそう、年に1〜2度だけ受け入れてくれてた 今日、思い出して覗いたら もう深緑色に染まってた、少し遅れたな 赤ちゃんどんぐりの元がついてる、どんぐりは2年生だから昨年咲いた花が成長して今年の実をつける、今年は沢山つけそうだな 久し振りって抱いたら、小さな声で少しだけ応えてくれた ありがとう 十分だよ またな 背中越し さわやかな風が木の葉を揺らしながら 頬をなぜていった |